毎日が幸せ食堂 ~シェフにナイショでブログ始めました~

フランス珍道中⑦ TGVで、ル・マンに!


 パリ・シャルトル間往復チケットを買ってしまったので、帰りの分をキャンセルして、レンヌ行きに買い換えないといけない。

 えっとえっと。よもやこんな遠くまで行くとは思っていないので、手元にあるのはパリと郊外についてのガイドブックのみ。もちろん、会話集も辞書もない。あるのは、とおーい、とおーい、とおーーーい昔に習った、私のフランス語の記憶のみ。

 電車があと1時間近く来る気配のないシャルトル駅は、待合室も窓口も暇そうである。一番退屈そうなオバサンのいる窓口に行って、おずおずとフランス語で話しかけてみる。

「こんにちは、すみません。」

「はい。」

「私は、行き先を変えたいのです。レンヌに行きたいのです。」

「はい。」

「でも、パリへのチケットがあります。(←「買ってしまった」という意味の過去形の活用が思い出せなかった。)これを、cancel(←ここだけ英語)することは可能ですか?」

「ウェン?」

「いや、ウェンっていう街じゃなく、レンヌ。(←フランス語風に発音すると、「ほんっ」に近い。排気量の強い「ほ」)」

「ウェン?」

「ほんっ。(←「レンヌ」のつもり)」

通じないのかな、私の発音。ちょっと弱気になったところで、オバサンがキレた。

「だから、When? When did you go to RENNE?(英語で、「あなたはいつ出発したいの?」」

あ、ウェンって、英語だったのね。通じてたのね、私のフランス語。

 時間を調べてもらうと、おばさんが今後の予定をプリントアウトして迫力ある英語で説明してくれた。

「今からだと、次の電車に乗って、ル・マンに行って、ル・マンからTGV(←フランスが誇る新幹線。世界最高速度を、JRの東海道新幹線と競っている)に乗っていけば、8時にはレンヌに着くわよ。」

え? ル・マン?

 ちゃらっちゃっちゃら~ちゃら~ちゃららら~ 
  っんっじゃじゃんっ じゃじゃんっ

(↑もちろん、フジテレビの日曜深夜にやっていたレース中継のテーマソングである)

もう、そのテーマが止まらない。オバサンは続けて調べてこういった。

「この電車しか、この時間レンヌにいくTGVはないんだけど。もうセカンド・クラスは売り切れて、ファーストクラスしないんだけど、どうする?」

 え?ファーストクラス?つまり、日本の新幹線で言うところのグリーン車?(いや、それよりもっと高級ですよ。)


「い、いくらくらいになりますか?」

「えっと、ちょっと待ってね・・・95ユーロくらいかしら。」

95ユーロ・・ざっと(本当にざっと)計算して15000円以下。ええい、でもいいか。ル・マンからレンヌまで1時間弱。ま、妥当かな。

「しかも、この切符(シャルトルからパリへの帰りの切符)をキャンセルするから、差額で、70とちょっとからしら。」

「ああ、それなら、大丈夫です。キャンセルしてください!お願い。」

そして、私たちはパリには帰らず、大西洋に向かう こととなった。

出発まであと数十分。シェフは、二台(しかない!)切符の販売機のうちの一台ところに立って何やらいじっている。すると、隣の台にいた人に何か話しかけられていた。慌ててこっちに戻ってくるシェフ。

「怒られたの?買わないのにいじってたから。」

「いや、違う。俺の見てた台は故障してるらしくて、それを見てたら、隣の人が『壊れてますよ』って教えてくれたんで、慌てちゃった。」

「『壊れてますよ』って何ていうの?」

「知らない。けど、多分そうだろう。」 さすが、動物的勘のするどいシェフ。フランス語が分からない分を、勘で補っているようだ。そうして私たちは残りの数十分を、壊れた自販機で切符を買おうとするフランス人たちの反応を観察し、電車が来るのを楽しく待った。(性格悪し)


ル・マンまでの電車からの風景は、さらにのどかであった。

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小さな家と緑広がる牧草地、若い緑の小麦畑。そして時々見える、白い牛、白黒の牛、黒い牛、羊や子羊、鶏、鴨・・・

丘を越え、ゆこうよ~
口笛、吹きつーつ~
小川澄み、青空~
まきば~めざーして~

うたおー ほがらに~ ともに手をとり、
ランラララララン

ララ、やぎさんも~ メーメー
ララ、やぎさんも~ メェ~

歌詞が若干おかしいが、私らの車両にはだれも乗ってこないので、ちょっと声に出して歌ってみた。のんびりゆったりとした時間が、間延びした夕日といっしょに日没の空間を彩っていく。

こんな日没なら、全然寂しくならないのにな。

電車が西へ西へ向かうので、太陽を追いかけているようだ。沈む太陽を、追いかける私たち。小さな川が流れている。

ヤドリギに覆われた木々が立ち並ぶ。っていうか、ヤドリギ、多すぎ。

電車内に差し込む陽が、ようやく少し冷たさを帯びてきた頃に、着いた。

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ル・マン

あのF1の、24時間耐久レースの。

ル・マン

のどかで暢気な旅行の中継地には一番似つかわしくない街だ。

とはいえ、残念ながらこの街には30分ほどしかいられない。駅前の商店街を歩いて雑貨店を探す。シェフのひげそりを買うためだ。このままだと、不審者と思われても仕方ないくらいの風体だ。(それじゃなくても、言動が怪しいのに。)その代わり、強盗に襲われる心配はないけど。襲われると心配されることはあってもね。しかし、残念ながら雑貨店もスーパーもない。シーズンオフのル・マンの街は、駅前が工事中であることもあり、全体的に閑散としていた。

c0201282_1328180.jpg



 記念にル・マン駅の写真を撮って、いざ、TGVのファーストクラスに。

TGVのファーストクラスは、新幹線のグリーン席とは全然レベルが違った。コンパートメント風に分かれた向かい合わせの座席は、文字通り飛行機のファーストクラス並みのふかふかシート。そして折りたたみ式のテーブルが付いている。そこでは、おしゃべりも禁止なようだ。静かな上品な空間。早速シェフは睡眠に入った。

ファーストクラスなのに・・。もっと、こう、ファーストクラス感を堪能してもらいたいのに・・・。

 ファーストクラスの人々は、テーブルに本やパソコンを広げ、一人ひとりが自分の時間を楽しんでいるようだ。手元に、趣味のいいランプ風のやさしい色のライトがあるのも、ファーストクラスならでは、だ。
 
 外はすっかり暗くなり、前の座席に座る青年に警戒(かなり)されながら、不釣合いな空間になじめない東洋人夫婦であった。(うとうとしながら、続く)
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by manmarunesan | 2010-02-20 13:28 | 旅のおもひで
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