内澤旬子 『飼い喰い』 その2
今日はお店のお手伝いをお休みして、内澤旬子『飼い喰い』を
読みました。 友だちの本だから、とか、実際に内澤さんちの豚と遊んだから、とか、 あるいはシェフがその豚たちを料理したから、とか、そういう事情を 一切抜きにしても、 とってもとっても面白い本でした! そもそもこんなこと(自分で豚を飼って、屠畜して、自分で食べることを 体験してみよう、ということ)を考えたキッカケは、 内澤さんの前作ルポ『世界屠畜紀行』で日本を含めた屠畜の 現状を世界各国で行いながら、じゃあ、「屠畜前」はどんな感じであるのだろう、 という、尽きることない彼女の探究心もしくは好奇心から、とのことでした。 一度「どうなってるんだろう?」と思うと、とことん突き詰めないと気が済まない のが内澤さんの良いところ。以前取材に行った千葉県の旭市の畜産関係者に、 「豚を飼って、自分で育てて、屠って、食べたい」と相談したところ、 親身に相談に乗ってくれる人たちの助けを借りて、幾多の問題をクリアしながら、 あれよあれよと準備が進んでいきました。 その頃、まんまるが内澤さんと会ったとき、確かに彼女が「いやあ、まんまるさん、 あーしは豚を飼いますよ。てへへへ」と言ってたのですが、それは老後くらいの 遠い先のことだと思っていましたよ。まさか、そのあとすぐに「豚をもらうことが 決まりました」等々、リアルな報告を耳にして、本当に驚いたものです。 だって、その時、彼女はまだ乳がんの手術をしてから1年ちょっとくらいしか 経ってなかったんですもの。どこにそんな気力と体力があったんでしょう。 そして、住む場所も決定、との知らせが。ああ、本当の本当に豚を飼うんだ、 この人は。と、もう驚きを通り越して感心するばかりでした。 で、話を内澤さんの本に戻しますが、 そもそも、普通の民家を借りてその庭先で豚を飼うのですから、まずは豚小屋作りから 大仕事。それもほとんど自分で作っていくので、住んでからも問題が次々と 発生。そのたびに、ほぼ自力で解決していくたくましさ。 最初は、本当に「豚を飼うこと」とはどういうことなのか、が詳しく記されて います。そこだけでももう十分に読み応えがあるのですが、ここはまだ文字通り 「序の口」。 その後、豚3匹と、内澤さんの共同生活が始まります。 いずれは「食べるため」に豚を育てるのに、内澤さんんはその3匹の豚に名前を つけました。そして、「ペットではないけれど」という前置きをしながら、 内澤さんは愛情を込めて、豚たちを育てて行きます。その共同生活の様子が、 「育てる」というよりも「振り回される」と言った方がよく、時々、プププと 吹き出してしまう、内澤節炸裂。「豚のお母さん」の内澤さんと、三匹の豚たち とのドタバタ生活日記。 まんまるもこのブログで書きましたが、内澤さんちにシェフと2度、遊びに 行きました。うんことりとか、豚の上に乗る、とか、堪能させてもらいました☆ で、また話は本の方に戻りますが、 いよいよ、お別れの時が近づきました。 内澤さんは、屠畜に「かわいそう」という感情も、その言葉も決して持ち出しません。 考えてみれば当たり前のことですが、それを「当たり前」と言えるほど、 私たちは食べられるものとそれを作る人たちに対して無頓着であるように思います。 でも、だからと言って、内澤さんが愛した動物たちと別れることが悲しくないわけじゃない んです。 単に「可愛がってた動物を屠って食べる」ということだけ聞くと、 「ひどい」とか「かわいそう」とか、「変人だ」とか「残酷だ」と言う人も いるでしょうが、内澤さんは、酷いひとでも変人でも残酷な人でもありません。 う、まあ、ちょっとは変わってるかもしれないけど・・・。 確かに、ものすごく好奇心の強い人ではあります。普通の人がなるべく 見ないようにする部分、考えないようにする部分を、細かく辛抱強く観察して 自分で納得するまで突き詰めて考える人ではあります。 「食べる」ということと「かわいそう」の間にある、私たちが無意識のうちに避けている 部分の蓋をこじ開けて、光を当てて、そして観察する、それが内澤さんなので あります。その過程で自分が傷ついたり涙を流したり汗を流したり、みっともない 部分まで込みで、見つめて、感じて、考えて、そして、文字にする。 あー、まあ、やっぱり変わってるかな。そういう点では。あ、良い意味で、ですよ。 だって、普通の人にはできませんもの。 いずれにしても、 自分で、愛するものたちとのお別れの時間を決める、というのは、どんな気持ちなのか、 まんまるの想像力程度ではとても思い描けません。 そのあたりの描写が、後半のクライマックスとなります。そして、最期の最期まで ドタバタで豚たちにふりまわされる内澤さん。悲しいシーンなのに、やっぱり読む方は 手に汗を握り、そして口元に笑みを浮かべ、でも目頭は熱くなって、なにやら涙まで 浮かべざるをえません。 屠畜場から最期の瞬間も、このころには「豚のお母さん」の内澤旬子と、「ルポライター」 の内澤旬子の部分が交互に出て来て興味深かったです。 肉になってからも、内澤さんの奮闘は続きます。そして、ここから、うちのシェフが 大きく関わっていくのであります。 ↑シェフのところに届いた「伸ちゃん」の頭部。ここから美味しいテット・フロマージュを シェフは作りました。 で、フィナーレが、「内澤旬子と3匹の豚の会」。 小劇場を一日だけのパーティー(?)会場に変えて、三匹の豚たちを、タイ料理・ 韓国料理・フランス料理にして、お客さんたちに食べてもらおう、と。 その時の様子も、それから、初めて内澤さんが三匹の豚たちを食べたときの心の 動きが、これまた興味深い。 その時の内澤さんの心の動きが、傍で見ていたまんまるも、なんとなく わかりました。なんていうか、こう、スーーーーーーッと、何かが内澤さんの 中に入っていくのが、見えた、というか、解った、というか。 ああ、あの子たちが内澤さんの中に還っていったんだな、と思いました。 その瞬間のスクープ写真もあるんです☆ 内澤さんがOKしてくれたので、アップしちゃえっ。 え?小さい?ええ、だってなんだか恥ずかしいんですもん。 実は料理以外の写真を撮るのが下手くそなんです、わたくし・・・。 (内澤さん、ごめんなさい。なんかちょっと怖い感じの写真になってます。) 肉を口に含んで、静かにゆっくりと咀嚼して、そして飲みこんで目を閉じたこの瞬間こそ、 三匹が内澤さんの身体に、あるいは、魂に、還ってきた瞬間でした。会場中が 「固唾を飲んで」見守っていたのも印象的でした。不思議な瞬間でしたよ。 ・・・・以下おまけ。夢にまたがり遊ぶまんまる・・・・・ 内澤さんの写真よりも、まんまるさん、あんたの写真の方がでかいじゃないか、と 思ったみなさん・・・ええ、そういう人間なんです、まんまるは。てへ。 まんまる自身が、まだちゃんと消化していないので、なんだか拙い説明文に なってしまいましたが、お読みになりたいなー、と思った方、そのうち 我が店でもサイン本(もちろん内澤さんの、です!)を販売しますので スタッフに聞いてみて下さいね。 (と、予告しましたが、先日8冊ほど仕入れたサイン本は全て行き先が決まって しまいました・・・ひー(嬉しい悲鳴)・・・しばし、お待ちくださいませね。) あっ、でもあくまでも「噂で聞いたのですが」を前置きして下さいね! このブログのことは、くれぐれも、お店の人たちには内緒にしておいてくださいね~~~ 今すぐ読みたい方は、アマゾンで、どうぞ~!
by manmarunesan
| 2012-02-25 20:30
| プリムールとゆかいな仲間たち
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