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毎日が幸せ食堂 ~シェフにナイショでブログ始めました~

フランス珍道中⑨  カンペール行きのTGVの中で

レンヌからカンペールは、TGV(フランスの新幹線)で3時間弱。
一昨日のファーストクラスとは一変して、セカンドクラスは
日本の新幹線の普通車とほとんど変わらない。

月曜日だというのに、子供や学生が多い。しかも、皆大荷物だ。
駅では大抵、誰かが誰かを迎えに来て、誰かが誰かと別れを惜しむ。

・・・休日なんだな、多分。そして学生や子供たちはおじいさんや
おばあさんの家に遊びに来たり、パリの学生たちは実家に帰って
いるのであろう。子連れの家族も多い。

フランス珍道中⑨  カンペール行きのTGVの中で_c0201282_14515623.jpg



 コワイ顔に似合わず、子供好きのシェフはフランスに来てからも
ご機嫌だ。この国は、子供が多い。そして、かわいい。シェフの
妙なジェスチャーにも、はにかんだり、こまったり、おこったり、
それぞれの子供のそれぞれの反応がかわいい。

 長い電車の旅にすっかり飽きてしまった女の子がいた。くるりと
座席の後ろを向いて、なにやら後ろの人(←知らない人らしい)と
話をしているらしい。

 シェフの「にやり」とする音が聞こえたようだった。でも、
女の子は警戒してシェフのところだけには来てくれない。遠くから、
当人はとっても愛想のいい、しかし客観的に言えば不気味な笑顔を浮かべる
東洋人中年に、ほいほい寄って来る子供がいようか。いやいまい。

 しかたなく、シェフがどこかでもらってきた不動産屋のフリーペーパー
を、私はベリベリと破り、大きな鶴を折ってシェフに渡した。

 女の子が、チョロチョロと歩き回ったそのとき、シェフが鶴を
女の子に差し出した。おそるおそる手にとって、ピャーっと自分の
座席に戻り、お母さんに鶴を見せた。

「クワ(←フランス語で「何」)とか言ってるよ、ふふふふ。」
 上機嫌である。(シェフが)

「クェクェとか鳴いてるよ。ふふふふ」
 とにかく上機嫌である。(シェフが)

 そんなに(シェフが)喜ぶなら、と、さらに広告を半分の大きさに
ペリペリ切り、もう少し小さい鶴と、さらにその半分の鶴と、
さらにその半分の鶴を、折ってシェフに渡した。

 三つの鶴をひとつずつ女の子に渡すシェフ。満面の笑みだ。(シェフが)
が、 傍目で見てると、やっぱりちょっとコワイ。ま、当人(シェフのこと)
がこんなに喜んでいるなら、いいか。

 4羽の鶴で遊ぶ女の子の座席から、声が聞こえる。

「ムッシュ・グラン」(大きいおじさん)

「マダム・プチィート」(ちいさいおばさん)

「ランファン」(こども)

「モワ!」(わたし)

 幸せの絶頂である。むろん、シェフが。

 女の子はお母さんと私たちが降りる駅の二つ前で、降りてしまった。

私たちの座席を通り過ぎるとき、お母さんが目を少しクルリンと動かし、
静かに挨拶。私も、細いながらクルリン。

 車窓越しに親子を探すと、女の子は大好きなおばあちゃんに抱きついて
いるところ。

 幸せな幸せな、光景である。目指すカンペールは、まだまだ先だったが、
私たちはこの光景だけでも、もうお腹一杯幸せ一杯だった。

(心が温まりながら、つづく)
by manmarunesan | 2010-02-26 14:56 | 旅のおもひで
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とあるビストロの幸せほおばり日記

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